マリア・エステル・グスマン演奏会 ≪2011.5.14.土、神戸芸術センター≫by H.Kawakatsu 一人の演奏者の演奏を3〜4メートルの至近距離内で聞けるのは大変ありがたい体験である。会場全体の大きさもそれにちょうどよい。演奏者と聴衆の呼吸がお互いに聞こえてくるような、音楽の伝搬が肌で感じられるような和やかな空気に包まれた空間での演奏会であった。 音とは音楽とは不思議な存在者である。目をつむって聴いていると頭の中にしか存在していないように感じられる。しかし目を開けてみるとそれは紛れもなくギターの弦から聞こえてくる。音は弾かれる弦と共に存在するのか、それとも私たちの耳のところに存在するのか、あるいは弦と耳の間に存在するのか、そんな他愛もない考えも浮かばせる演奏である。 やはり圧巻の曲はバッハのフルートソナタホ短調。未知の曲だがバッハらしいバロックの音の小刻みな流れが親しみを呼ぶ。その音が間断なく演奏者の指からはじき出されて流れ出してくる。音楽を聴くだけではなくて見る事ができた時間と空間だった。フルートで聴いた記憶もないので比較はできないが、チェンバロでの演奏も連想させる一曲である。誰もがその指使いに圧倒されながら音楽にも酔いしれる瞬間。得難い時間が流れていると実感する。 第二部の一曲目「花咲く桜の木の陰で」は東北の大地震への追悼の曲であるという。そこで歌われているのはむしろ美しい桜に彩られた春の風景である。演奏者の日本への思いと桜への思いが綴られた一曲である。東洋的な線律が現れては消える音の流れは桜の散るさまが見事に描かれた標題楽でもあった。 アンコール曲の「アルハンブラの思い出」と「アストーリアス」によって落ち着いた気分で演奏会が閉じられた。ステージの赤いバラが金髪の演奏者にとても似合っていた。 (2011.5.19.木) |
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